- 11/11/2025
- 十月振り返りpart1
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大人になると一か月なんて深めのため息を五,六回もつけばすぐ経ってしまうものだが、それにしても十月はそれなりに忙しかったのでまさに息をつく暇もなかった。息をとめ、キンモクセイの香りを嗅ぐこともなくうっ血した顔色で駆け抜けた十月の思い出のいくつかをここに記しておくことにする。何故かというと、ここはそういう場所だからである。
10/15(wed):インフルエンザから回復して(このあたりは前項に詳しい)、最初の外出はバックドロップシンデレラのgt.渉さんとの弾き語りツーマンin池袋だった。普段あまり行くことはないが俺は池袋という街がけっこう好きで、十五歳のころ京都駅から夜行バスに乗って池袋のアニメイト本店に行き、エヴァのよくわからんストラップだけ買って帰ったこともある。別にアニメイトなんてどこにでもあるのだが自分の力で遠出がしたかったという欲求そのものがコトの本質であったのは言うまでもなく、その行き先が池袋だったことに自らの業がある。多分、シブヤとかそういう言葉やカルチャーがその頃から嫌いだったんだと思う。下北沢とかそういう場所は、たぶん知りもしなかった。いずれにせよ、池袋駅で降りるたびに十五歳の情景が蘇ってくるので内心勝手に感動していたりする。演奏中、俺のとあるMCをきっかけにお客さんの手でテキーラや焼酎が山のようにステージまで運ばれてきて曲の合間合間でそれを次々と一気飲みし、出番が終わった後もそんな調子でガブガブ飲んでいたのでイベント中の記憶があまりないが、終演後、毎回連れて行ってもらう店で渉さんとふたりになった時にバックドロップシンデレラの“池袋のマニア化を防がNIGHT”を聴いていた十五歳当時の思い出を伝えられたのでよかった。バンドの生息している界隈は微妙に違うが俺は渉さんという人格に不思議なシンパシーを感じている。年下の俺が言うのもナンだしもしかしたら失礼にあたるかもしれないがあえてシンプルに言わせてもらえば俺たちは性格がとても似ていると思う。その街を好きにさせてくれるバンドが好きだ。俺もいつかそんなバンドになりたいと思う。翌日に備えて終電で帰宅。
10/16(thu):いつだったか詳しい日付は忘れたがとにかく暑い夏の夜に堺ファンダンゴの加藤さんから「10/16空いとるよな!?名物店長ツアーファンダンゴ編やるからよろしく!!」と電話がきて────まぁ名物店長ツアーについて一応の説明をしておくと、加藤さんを筆頭に名古屋は今池HUCK FINNの黒崎店長や元下北沢SHELTERの店長で現沖縄OUTPUTの上江洲店長など、酔っ払うと怪物になってしまう初老の名物ライブハウス店長たちが一堂に会してステージの脇でひたすら酒を飲み最後には怪物同士で殴り合いになるまで馬鹿騒ぎをするという本当にどうしようもないイベントで、本当にどうしようもないが残念なことに面白いので俺もノーギャラで頻繁に帯同している。事務所からはいい加減あのイベントに関わるのはやめろと口酸っぱく言われているが奇しくもノーギャラなおかげで個人的な旅行という扱いになっているのか、とにかく今のところ押し切ることができているものの今後どうなるかはわからない。ちなみに現地に着くなり我々演者も含めて(というかある意味このツアーシリーズの役者は我々ではなく本来スタッフである名物店長たちなのだが)ガブガブに酒を飲むため後ろの方の出番になると誰もまともに演奏できなくなってステージで寝ているだけだったりするので音楽的なパフォーマンスを求めての来場はオススメしない、というかそもそも来場をオススメしない。過去のシリーズにおける様々な伝説の数々もここに書き連ねたいところだがいちいちここに記していくと卒論のボリュームになってしまうので泣く泣く割愛しておくことにする。とにもかくにもそのイベントのオファーがあったので今回も快諾し(なぜ快諾する)、その日を待っていると開催の数週間前になって加藤さんが「名物店長ツアーはもうやらない方がいいと思う」などと突如真っ当なことを言い始め、加藤さん、マジメにやってくれよ……と合ってるんだか合ってないんだかチグハグな感想を抱きつつもとにかくこれはイベントごとバラしだなと思っていたらイベントの趣旨がスギムのお誕生日会という(しかも別にその日お誕生日なわけではない)名目にすり替わる形でいつの間にか勝手にSNSに発表されていてスギムも加藤も全員まとめていい加減にしてくれと思ったもののいざ行ってみるとめちゃくちゃ楽しくて後日落ち込んだ。好きでもない男とセックスしてしまう女の気持ちが少しだけわかった気がする。ファンダンゴの近隣の店は夜にはすべて閉まるので終演後に行き場をなくした男たちでぞろぞろと海辺へ向かい誰からともなく上裸になって大声でしりとりをしていたらいつの間にか警察に囲まれてしまうなどその夜の打ち上げのどうしようもないエピソードは枚挙に暇がないので割愛するが、イベント自体の演目としてはニンクスというクソの塊みたいなパンクバンドがステージで小便飲んでゲボ吐いてたりしていて地獄だったのでやはり割愛する。しかし俺も俺で結局そいつらと翌日の昼まで飲んでそのままスパワールドで温泉に入ったり館内のゲームコーナーでプリクラを撮ったりと大はしゃぎしてしまい好きでもない男にアナルセックスまで許してしまった気分になった。道中、ひとり脱落しふたり脱落し、の大騒ぎの中で「お前らみたいなヨゴレと一緒におったら俺までヨゴレや思われるワ」「いやいや兄さん勘弁してくださいヨ~」などと笑い合っていた俺たちだったが、最後まで騒ぎ続けた精鋭三人でヘトヘトの状態で夜の新大阪で解散したあと新幹線の中でふとスマホを見るとこの旅の色々な思い出を共有するための精鋭三人のLINEグループができていてそのタイトルがヨゴレトリオだったので好きでもない男にハメ撮りまで許してしまった気分になった。もう嫌だ。あいつらと絡んでもロクなことがない。俺はもっと、麻布で俳優と飲んだりしたいんだよ。なりふり構わず言いますけどね、けっこう俳優さんにもPKリスナーがいると方々から伺っておりますよ!!!!!!人助けだと思って連絡ください!!!!!!もうね、おごるから!!!!面白い話とか、するから!!!!敬具!!!!!!!
10/20(mon)~22(wed):どういういきさつでそんな事になったのか今もってしてイマイチ理解していないのだが男ばかり十人ほどで伊豆大島に旅行に行った。さっきからずっとむさ苦しくてもう自分で書いてて嫌になってきたがとりあえず分かる範囲でいきさつを書くと、チケットぴあの新井さんにこのあたりのスケジュール空いてるか?と言われて空いていると言ったらもう行くことになっていた由。どうやら俺にはハルヒでいうところのキョンとしての才能があるっぽい。参加者は俺と上述の新井さんを除けば、元スペースシャワーTVで現ぴあの山根さん、StoryWriterやRollingStoneJapanの編集者である西澤さん、PK shampooからn千万を横領して姿をくらましていた元PKマネージャー大場、下北沢デイジーバーや時速36kmのマネージャーとして働いていたが今はどちらも辞めて失業保険で下北沢をふらふらしているただの無職カネコ、同じく無職で全財産数千円の状態であり今後返せるアテもないのに誰かに金をタカる気満々で現れた龍ノ平などなどで、ただでさえ男というかおっさんだらけな上に半分くらいが泥棒と無職で構成されていて旅行中の貴重品の管理なども含めて非常に危ういとは思ったがこの中で西澤さんを引き込んだのは俺であったりもしたので責任という観点からも参加はやむなしと判断したものである。ちなみに伊豆大島はフェリーないし調布の小さな飛行場から十九人乗り(!)の小型プロペラ機に乗って向かう離島であり、島の中にコンビニはひとつもなく、信号機も数基あるか無いかで、宿は大きめの一軒家を借りて男十人で雑魚寝だと伝えられていたので当初は練炭でも炊いて集団自殺でもするつもりなのかと思っていたがいざ行ってみると大人の修学旅行のようで意外に楽しくまたもや大はしゃぎしてしまった。ここでもやはり書ききれないほど色々なことがあったが、たとえば、を時系列順に書いていくと、島に到着するとまず港の前に小さなレンタサイクル屋があって、そこでは自転車のほかに原付を借りることができ、自然と有志数人がその原付でプチ・ツーリングを画策しはじめ俺もそれにひとクチ乗りたかったのだが、あろうことか俺は更新を失念していて数週間前に免許を失効しており────そもそも俺の免許というのは高校時代、友達の原付を無免許で乗り回していて思いっきり逮捕された時にそんなにバイクに乗りたいならちゃんと免許を取れと親に諭されて取った普通自動二輪なのだが、俺は無免許で夜な夜な原付に乗るのが面白かっただけで別段バイクに興味があったわけではなく、教習所を卒業してから十五年くらい一度も、本当に一度もバイクにまたがったことはなかったのである。その虎の子の免許が十五年の時を越えて初めて役立ちそうな時が来たにも関わらず、よりにもよってこのタイミングでそいつを失効しているとは何たるバッド・ラック……やっぱり俺の人生って、云々……と本気で落ち込みそうになったのも束の間、海の方角から(360度海だが)巨大な雨雲がやってきてツーリングの話は立ち消えになり、それが本当に、本当に、めちゃくちゃうれしかったです(小並感)。何なら普通に原付に乗れた場合より嬉しいかもしれないくらい嬉しかったから自分でもびっくりした。「幸せを手に入れるんじゃない。 幸せを感じることのできる心を手に入れるんじゃ」とは甲本ヒロト氏の名言のひとつであるが、俺はその心をいつの間にか手に入れていたんだなあと勝手に感慨深かったものだ。あとはその夜、飲みすぎた龍ノ平が気絶しておしっこをもらしたり、二日目の夜に前日の失禁をイジられすぎた龍ノ平が酔っぱらって全員にブチギレながら気絶し、あろうことか中指を立てたままおしっこをもらしたりと色々なことがあったが例によって割愛する。ちなみに参加者のひとりであったCRYAMYのdr.大森は島に着くや否や40℃の高熱を出して宿の一室で三日間ずっと寝ており、帰ってきた我々もそれが伝染ったのかどうか知らんが七割くらいのメンバーが発熱などの症状を訴えることになったりした。つまり伊豆大島、完全におすすめです(なんでだ)。調布飛行場を離陸し、小型プロペラ機特有の低めの巡航高度からゆっくり東京の街並を眺めていると、幹線道路を圧し合いながら走る車がベンツなのか軽バンなのか、はたまたあのあたりの土地はいくらで、あの家は庭付きで……といった俗世の関心ごとがまるでくだらないことに思えてきて、十把一絡げに「みんながんばって暮らしててワロタ」としか思えなくなってくるところがあり、これは仏陀の悟った縁起の視座に匹敵するものであると思う。そしてこれを連用して、たとえばこっちの町の学校で上手くいかなきゃ、あっちの町に行けばいいだけだよなあ、とか、はたまた、こっちのビルで働いてちっとばかし偉くなったからって、あっちのビルにいけば何も関係ないよなあ、と自然に考えられるようになると我々の生はグングンと涅槃に近づいていくこととなるわけです。皆さんも僕のように、目先の幸せを手に入れるんじゃなく、 幸せを感じることのできる心を手に入れてみてください。たとえばそう、自分の参加できないツーリングが丸ごと中止になったことを心から喜んでみたりするところからスタートするのです。免許をスムーズに更新できたことが一度もなく毎回失効してから再取得しているせいで常に謎の講習を受ける必要があったり、古くはセンター試験の出願をミスしてすべての国公立大学の受験資格を失ったり、単位は全部取り終えたのに大学にTOEICの結果を提出し忘れたせいで三年目の留年が決まったりと色んな場面で転倒してきた人生ですが、同じ島で同じ雨に打たれてくれる友人たちのおかげで毎日割と幸せなようです。ここまで長々と書いてきましたが要するに本稿で俺が言いたいのは俺はずっとビショ濡れなんだから俺以外の奴らも全員ビショ濡れになれ、ということであります。島で気絶しながらおしっこをもらし、履いているズボンがみるみるビショビショになっていく龍ノ平を見て、俺はあまりの嬉しさから思わず「ヤッター!!!!」と叫んでしまいました。これが幸せを感じる心です。感じましょう。全身で。幸せを。ちなみに叫びながら撮った動画とかもあるので今度そういう動画の数々をプロジェクターで映しながら酒飲むイベントでもやろうと思っています。これを読んでいる君も同じ雨に打たれてくれ。頼む。毎度のことながら何が言いたいのか分からなくなってきたしあっという間に五千字を越えたので続きはまた後日。ちなみに件の大島旅行に誘ってくれた新井さんと現mg岩永との鼎談が昨夜リリースされていたので共有。取材も大島参加者SW西澤さんです。もうええて~。

追伸:サイキックのチケット、既にいつソールド切ってもいいくらいの売れ行きだそうですがたぶん色んなルール(消防法とか?)ギリギリのところまで、具体的にはあと百枚くらいだけ売ってみることになりそうです。さて、どうなることやら……。
↓あと100枚

